下記は、国税庁「平成23年度 法人税関係法令の改正の概要」を基に記述しております。
この「改正の概要」は、次の目次となりますが、本稿では抜粋にて掲載致します。
├1 雇用促進税制の創設
├2 環境関連投資促進税制の創設
├3 国際戦略総合特別区域に係る税制の創設
├3-1 国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除
├3-2 国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例
├4 認定研究開発事業法人等の課税の特例の創設
├5 中小企業者等の法人税率の特例の延長
├6 その他主要な改正事項
├6-1 棚卸資産の切放し低価法の廃止
├6-2 仮決算をした場合の中間申告書の提出に係る見直し
├6-3 清算中法人等の株式等に係る評価損の損金不算入
├6-4 複数の大法人の100%子法人等に対する中小企業向け特例措置の適用の見直し
├7 その他の改正
├7-1 減価償却制度に関する改正
├7-2 税額の計算に関する改正
├7-3 準備金制度に関する改正
├7-4 資産譲渡の場合の課税の特例制度に関する改正
├7-5 国際課税に関する改正
└7-6 その他の改正
1 雇用促進税制の創設
青色申告法人が、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、当期末の雇用者※1の数が前期末の雇用者の数に比して5人以上(中小企業者等※2については2人以上)及び10%以上増加していることにつき証明がされるなど一定の場合に該当するときは、20万円に基準雇用者 数を乗じて計算した金額の特別税額控除ができることとされました。ただし、当期の法人税額の10%(中小企業者等については20%)相当額が限度とされています。
※1 法人の使用人のうち雇用保険の一般被保険者であるもの。使用人から役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除きます。
※2 中小企業者又は農業協同組合等をいい、中小企業者は、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人をいいます。
① 発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資 金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)の所有に属している法人
② ①のほか、発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人
●適用要件 下記の全ての要件を満たしていることが必要となります。
- 前期及び当期に事業主都合による離職者がいないこと。
- 基準雇用者数 ≧ 5人(中小企業者等については2人)
- 基準雇用者割合 ≧10%
- 給与等支給額 ≧ 比較給与等支給額
- 雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業(一定の事業を除く)を行っていること。
●税額控除限度額の計算
税額控除限度額 = 基準雇用者数 × 20万円
(当期の法人税額の10%相当額が限度、中小企業者等は20%)
●適用時期 平成23年4月1日以後に開始する事業年度(平成23年6月30日前に終了する事業年度を除きます。)分の法人税について適用されます。
5 中小企業者等の法人税率の特例の延長
中小企業者等の平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度の所得の金額のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率については22%から18%に引き下げられています。また、連結納税制度においても、中小企業者等(協同組合等又は特定医療法人を除きます。)が連結親法人である場合の税率については単体制度と同様に、協同組合等又は特定医療法人が連結親法人である場合の税率については年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率が23%から19%に引き下げられています。
中小企業者等の法人税率の特例について、23年3月改正法により適用期限が平成23年6月30日までの間に終了する各事業年度まで3ケ月延長され、23年6月改正法によりその適用期限(平成23年6月30日)が平成24年3月31日までの間に終了する各事業年度まで9ケ月延長されました。
以上のように、23年度改正は、通常の改正と異なり少々変則的な改正となっております。
区分 | 税率 | ||
---|---|---|---|
普通法人・人格のない社団等 | 中小法人等又は 人格のない社団等 |
年800万円以下の部分 | 18% |
年800万円超の部分 | 30% | ||
中小法人等以外の法人及び相互会社 | 30% | ||
一般社団法人等及び公益法人等とみなされている法人 | 年800万円以下の部分 | 18% | |
年800万円超の部分 | 30% | ||
公益法人等 | 年800万円以下の部分 | 18% | |
年800万円超の部分 | 22% | ||
協同組合等 | 年800万円以下の部分 | 18% (19%) |
|
年800万円超の部分 | 22% (23%) |
||
特定の協同組合等の年10億円超の部分 | 26% | ||
特定医療法人 | 年800万円以下の部分 | 18% (19%) |
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年800万円超の部分 | 22% (23%) |
(注)表中のかっこ書きは、協同組合等又は特定医療法人が連結親法人である場合の税率を表します。
6-2 仮決算をした場合の中間申告書の提出に係る見直し
普通法人は、その事業年度が6月を超える場合には、当該事業年度開始の日以後6月を経過した日から2月以内に、前期基準額(前事業年度の確定法人税額を前事業年度の月数で除 し、これに6を乗じて計算した金額をいいます。)などの所定の事項を記載した申告書(「中間申告書」といいます。)を提出することとされています。
なお、この中間申告書を提出すべき法人が当該事業年度開始の日以後6月の期間を一事業年度とみなして当該期間に係る所得の金額又は欠損金額を計算した場合には、中間申告書に代えて、当該所得の金額又は欠損金額などの所定の金額を記載した申告書(「仮決算をした場合の中間申告書」といいます。)を提出することができることとされています。
税制改正では、仮決算をした場合の中間申告書は、①仮決算をした場合の中間申告書に記載すべき法人税の額(中間申告予定額)が前期基準額を超える場合及び②前期基準額が10万円以下である場合(前期基準額がない場合を含みます)には、提出できないこととされました。
この改正は、平成23年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
これは、中間申告で納税をし、確定申告にて還付を受ける場合の還付加算金の防止策と言われています。
7-1 減価償却制度に関する改正事項
改正事項 | 改正の内容 | 適用時期等 | 様式 |
---|---|---|---|
(3)陳腐化した減価償却資産の償却限度額の特例 | ◯本制度は廃止。 | 平23.3.31以前に開始した事業年度において償却限度額の特例の承認を受けた場合(平23.4.1以後に開始する事業年度において平23.6.30前に承認を受ける場合を含みます。)の償却限度額の計算については、従来どおり。 | |
(4)エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却 | ◯即時償却に係る措置の適用期限が平成24年3月31日まで1年延長。 | 付表1 | |
(5)事業基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却 | ◯適用期限が平成24年3月31日まで1年延長。 | 付表4 | |
(10)事業革新設備等の特別償却 | ◯適用期限が平成24年3月31日まで1年延長。 ◯即時償却に係る措置の適用期限が平成24年3月31日まで1年延長。 ◯産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行に伴い所要の整備が行われました。 |
左の法律施行の日から施行されます。平23.7.1 | |
(16)障害者を雇用する場合の機械等の割増償却 | ◯適用要件に、法定雇用率1.8%を達成している事業主で、基準雇用障害者数が20人以上であり、かつ、重度障害者割合が50%以上であることが追加され、現行要件との選択適用とされました。 ◯適用期限が平成26年3月31日まで3年延長。 |
平23.6.30以後に終了する事業年度分に適用され、同日前に終了した事業年度分については、従来どおり適用。 | |
(17)障害者対応設備等の特別償却 | ◯本制度は廃止。 | 平23.6.30前に取得等をした障害者対応設備等については、従来どおり適用。 | |
(18)事業所内託児施設等の割増償却 | ◯本制度は廃止。 | 平23.6.30前に取得等をした事業所内託児施設等については、従来どおり適用。 | |
(20)サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却 | ◯適用対象となる住宅が、高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定するサービス付き高齢者向け住宅のうち一定のものとされるとともに、その割増償却率が28%(耐用年数が35年以上であるものについては、40%)とされました。 ◯適用期限が平成25年3月31日まで3年延長。 |
左の法律施行の日以後に取得等をした住宅に適用され、同日前に取得等した高齢者向け優良賃貸住宅については、従来どおり適用。 | |
(21)特定再開発建築物等の割増償却 | ◯対象建築物の見直し イ、都市再開発法の施設建築物・・・対象建築物が地上階数4以上の中高層耐火建築物に限定 ロ、都市再生特別措置法の認定計画に基づく都市再生事業により整備される建築物・・・事業区域内における一定規模以上の建築物整備要件が必須要件化 他 |
イ、ロの場合は、平23.6.30以後に取得等する建築物の適用され、同日前に取得等した建築物については従来どおり適用。 | |
(22)倉庫用建物等の割増償却 | ◯対象区域の鉄道貨物駅周辺区域が除外され、臨港地区の範囲の見直しが行われました。 | 平23.6.30以後に取得等する建物等の適用され、同日前に取得等した建物等については従来どおり適用。 |
7-2 税額の計算に関する改正
改正事項 | 改正の内容 | 適用時期等 | 様式 |
---|---|---|---|
(1)試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の特例 | ◯適用期限が平成24年3月31日まで1年延長。 | ||
(2)事業基盤強化設備等を取得した場合等の法人税額の特別控除 | ◯適用期限が平成24年3月31日まで1年延長。 | 別表6(15) |
7-3 準備金制度についての改正
改正事項 | 改正の内容 | 適用時期等 | 様式 |
---|---|---|---|
(2)農業経営基盤強化準備金 | ◯適用期限が平成25年3月31日まで2年延長。 ◯対象となる交付金等の範囲について、所要の見直しが行われました。 |
平23.6.30以後に交付を受ける交付金等に適用され、同日前に交付を受けた交付金等については従来どおり適用。 |
7-4 資産譲渡の場合の課税の特例制度に関する改正
改正事項 | 改正の内容 | 適用時期等 | 様式 |
---|---|---|---|
(1)収用等に伴い代替資産を取得した場合等の課税の特例 | ◯土地等が農地法の規定に基づき買収され、対価を取得する場合の措置が廃止。 | 平23.6.30前に行った土地等の譲渡については従来どおり適用。 | 別表13(4) |
(3)特定の資産の買換えの場合等の課税の特例 | ◯適用対象となる買換えの見直し イ、既成市街地等の内から外へ買換(旧1号) ・譲渡資産の範囲から店舗として使用される建物等を除外 ・買換資産のうち農業・林業以外の事業の用に供されるものが市街地区域内の区域区分を定める区域内にあるものに限定 ロ、市街化区域又は既成市街地等の内から外への買換(旧5号)から林業用土地等への買換えが除外 ハ、誘致地区内への買換(旧7号)の一部区域への買換えが廃止 ・流通業務市街地の整備に関する法律の流通業務地区ほかその他の区域 ニ、都市開発区域等内への買換(旧9号) ・都市開発区域のうち既成市街地等内にある譲渡資産は一定の事務所等として使用される建物等に限定 ホ、既成市街地等内での土地の計画的かつ効率的な利用に資する買換(旧10号)が都市再開発法の認定再開発事業計画に係る措置が廃止 ヘ、日本船舶から日本船舶への買換(旧19号)の買換資産について船齢要件が追加、環境負荷低減要件の見直し ◯適用対象の買換えの廃止 旧2号、旧3号、旧4号、旧8号、旧11号、旧12号、旧13号、旧16号、旧18号 ◯長期所有土地等から国内の特定の資産への買換(旧17号)を除き、適用期限が平成26年3月31日まで3年延長。 |
平23.6.30以後に譲渡・取得する資産に適用され、同日前に譲渡・取得した資産については従来どおり適用。 | 別表13(5) |
7-6 その他の改正
改正事項 | 改正の内容 | 適用時期等 | 様式 |
---|---|---|---|
(4)寄附金の損金算入限度額 | ◯寄附金の損金算入限度額の計算における所得の金額の計算上、適用しないこととされる規定に次の規定が追加 イ、国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例 ロ、認定研究開発事業法人等の課税の特例 |
左の法施行日より施行されます。 | 別表14(2) |
(25)中小企業等の貸倒引当金の特例 | ◯公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の繰入限度額に係る割増措置の適用期限が平成24年3月31日まで1年延長。 | 別表11(1の2) |